休診日:水曜/日曜/祝日

  • 診療時間
  • アクセス

[ 東洋医学・漢方 ]

中国から伝来し、日本で発展した医学の総称・漢方医学をいいます。

漢方(かんぽう)は、紀元5~6世紀頃に朝鮮半島を経由して中国から日本に伝来しその後1500年間、日本で独自の発展を遂げた日本の伝統医学です。その原形は紀元2世紀、後漢の時代までに完成したと言われています。その頃に書かれた『傷寒論』(しょうかんろん)という書物には急性熱性疾患の治療、『金匱要略』(きんきようりゃく)という書物には消化器病や婦人病などの慢性疾患の治療について論じられています。有名な葛根湯(かっこんとう)も『傷寒論』に記載されている処方です。

漢方とは、現在は漢方薬による治療のみを指すことが多いですが、元来は鍼灸や按摩、食養生なども含みます。

漢方外来
毎週月曜日
15:15~
予約制
新井信医師担当
東海大学医学部専門診療学系漢方医学准教授/総合内科専門医、
漢方専門医・指導医
エキス剤や煎じ薬などの保険診療は勿論、西洋医学的な立場からも診療いたします。

通常の診療でも漢方薬の処方をしております(院長も日本東洋医学会専門医・指導医です)。

西洋医学では、基本的にはまず初めに、この患者さんはどんな病態なのかを診断して、病名をつけ、それから治療を行うというプロセスを必要とします。一方、漢方では、目の前の患者さんにどのような処方を用いれば体調がよくなるのかを考えます。つまり、患者さんを診察して診断をつけることと、治療法を決定することが一つのプロセスの中で行われるのです。ですから、西洋医学でははっきりとした診断がつかないために、的確な治療法が見つからないケースでも、漢方医学的にアプローチしてみると、意外と単純な処方でよくなってしまうこともあります。そうでないにしても、何らかの治療の糸口が見つかる場合も少なくありません。

検査データに異常を認めないケースでは、西洋医学ではなかなか打つ手がありません。その点、漢方治療はさまざまな自覚症状に対して、それを治療することを目標にしています。そして、最終的には、生活の質(QOL:Quality of Life)を向上させること、すなわち『元気で楽しい日常生活を取り戻せること』が願いなのです。

漢方では、『四診』を通してもっとも適切な処方を決定します。

患者様の表情や行動を見る『望診』
声の大きさや体臭を嗅ぐ『聞診』
つらい状況やふだんの体質傾向を聞く『問診』
腹を触ったり脈を取ったりする『切診』

~ 症例でわかる 漢方薬入門 新井信 ~ より引用

四診(ししん)

望診(ぼうしん)a.精神状態をみる
b.顔の気・色をみる
c.舌の様子をみる
d.患者の姿勢・形態をみる
聞診(ぶんしん)a.音声をきく
b.においをかぐ
問診(もんしん)a.感熱はどうか
b.汗はどうか
c.頭痛の有無はどうか
d.身体はどうか
e.大便はどうか
f.小便はどうか
g.飲食はどうか
h.胸はどうか
i.耳はよくきこえるか
j.口に渇きはないか
切診(せっしん)a.脈をみる
b.胸腹、背、手足をおさえてみる

症状と漢方

冷え

西洋薬には、冷えに効く薬はほとんどありません。つまり暖める薬はとても限られています。漢方薬には、身体を暖める薬があります。手足の冷え、身体がぞくぞくとする、冷えると足腰が痛む、冷えると鼻水が出るなどの症状でお悩みの方は相談してください。

お腹が張る(腹満)

便秘をしていないのにお腹が張る、下痢止めを飲んだらお腹が張る、便が少しずつしか出ずお腹が張るなどの症状のある人は漢方薬を服用してみてはいかがでしょうか。

風邪

西洋薬の風邪薬は咳止め、鼻水を止める薬、細菌感染の時の抗生物質、解熱剤、痛み止めなどしかありませんが、漢方薬には様々の病態に合わせた治療薬があります。例をあげると寒気の強い風邪、少し風邪気味の時、関節痛の強い風邪、熱が上がらなかったり下がらなかったりしてなかなか治らない時、風邪で汗のたくさん出るときなどです。寒い冬を快適に過ごすために漢方薬を飲んでみてください。「明日、風邪で休めないので注射をしてください。」とよく言われます。細菌感染症には抗生物質が良く効きますが、風邪(ウイルス感染症)には抗生物質は効きません。解熱剤、ビタミン剤なども風邪を治す作用はありません。風邪には漢方薬がすばらしい効果を発揮することがあります。風邪の時は漢方薬をぜひ試してみてください。

下痢

「長く続く下痢」、「以前よりお腹が弱い」、「下痢と便秘を交互に繰り返す」などの症状の人は漢方薬がおすすめです。冷えやお腹の張りを良くする薬は西洋薬では見あたりません。是非ご相談ください。

西洋医学的には、肺や心臓が悪い場合に咳が出ると考えられていますが、漢方医学的には肺や心臓のみでなく色々な臓器から咳が出ると言われています。実際に「冷えて咳が出る。」「クーラーに当たると咳が出る。」「気持ちがふさぐと咳が出る。」など皆さんも経験されているところと思います。咳の続く方はご相談ください。

乾燥肌

寒い風が吹いて来ると肌のカサカサが気になりませんか。御年配の方で寒くなると入浴後にかゆみが増してくる方はいらっしゃいませんか。アトピー性皮膚炎のある方にも冬はつらい季節です。西洋薬には乾燥肌に対して塗り薬と抗アレルギー剤しかありませんが、漢方薬も効果があります。寒い冬を快適に過ごすために漢方薬を飲んでみてください。

痛み

痛みは大変つらいものです。西洋薬の痛み止めは確かに効果は強いですが、胃腸障害、腎障害などの副作用もあります。長くのみ続けるのには色々注意が必要です。また冷えて痛む、天気が悪いと痛む、痛みとむくみがあるというような神経痛には漢方薬が効果があります。漢方薬、鍼灸などで痛みをコントロールすることも可能です。ぜひ試してみてください。

めまい

めまいは大変つらい症状です。緊急性のあるめまいや手術の必要なめまいもありますが、漢方薬でからだの水分の偏在(水毒)を治療することが、めまいの改善につながります。天井がぐるぐる回るようなめまい、雲の上を歩くようなめまい、立ちくらみによるめまいなどは、漢方薬を服用してみてください。

知っておきたい漢方用語

表裏《ひょうり》

漢方では、病気のパターンを認識するときに、一定のルールがあります。病気の位置が、どこにあるかを見る時に、病気が皮膚や筋肉(表)に起きているのか、あるいは内臓(裏)に起きているのかを診断します。その際に使われるのが表裏という考え方です。

寒熱《かんねつ》

寒気がする、手足が冷えるなどの自覚症状があれば寒、からだが熱いとほてるといった場合は熱と考えます。漢方薬で寒証を治療するときには、からだを温め新陳代謝を盛んにする薬を用い、熱証に対しては、炎症や興奮を鎮める薬を使います。

実虚《じっきょ》

実と虚は病邪との関係を表し、病毒が体内にあるにも関わらず、これと戦う精気や体力が欠けている状態を虚証といいます。これに対し、病毒がからだに充満していて、精気や体力がこれと十分拮抗できる状態を実証といいます。病気がなくても、普段から序弱体質の人は虚証です。

気・血・水《き・けつ・すい》

漢方では、人間のからだを構成している組織や臓器に対して、活力や生命力を与えているのは、気・血・水の三つであると考えます。これがバランスよく循環している時は健康ですが、このバランスが崩れると病気になると考えます。気とは生命力であり、エネルギーのことです。

瘀血《おけつ》

血液の滞留によって起こる病気の原因を漢方では瘀血と考えます。女性の場合、月経異常や更年期障害など、月経に関する病気の原因は瘀血とされ、血の道症といいます。その他、打ち身など血液が滞って起こる病気も瘀血です。治療には、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)などの駆瘀血剤が用いられます。

水毒《すいどく》

水分の滞留によって起こる病気には、めまいや耳鳴り、雨の前日の頭痛などがあります。人間のからだの約七割が、リンパ液などの水分で成り立っているので、水分の運行状況が偏ってくると、水毒と呼ばれる状態になります。処方としては五苓散(ゴレイサン)などがあげられます。

気虚《ききょ》

気とは、人間のもつエネルギーのことですが、〔病は気から〕という言葉が、象徴的に表わしているように、人間の元気や精気が不足した状態を気虚といいます。気は自律神経と関係が深く、喜怒哀楽などの感情に支配されやすいものです。

未病を治す《みびょうをなおす》

優秀な漢方医は、まだ発病していない病気を治すことができるという意味です。からだが不調だが、まだ病気というほどではない状態の時に、食物や睡眠、運動など日常生活のセルフコントロールで、病気を予防することができるという予防医学の思想です。

瞑眩《めんげん》

漢方薬を飲み始めてからしばらくすると、突然症状が激しく悪化したようになることがあります。これを瞑眩といい、その後、症状が快方に向かうことがあります。体内にたまった毒が、自壊作用を起こすからではないこといわれていますが、激しい症状が出たときは医師に相談してください。